仮想通貨の代替可能性(Fungibility)と税

 こんばんは、道民です。

 まだCoincheckの件についてはいろいろと憶測が飛び回っていますが、NEMの損益計算処理についてまだ思うところがあったので補足したいと思います。

 

 

NEMの強制利確と課税関係(補足)

 (前の記事に引き続いて以下で述べることは全部仮説ですので、鵜呑みにしないようお願いします!)

有史による国税庁への質問

 NEMの強制利確とその課税関係について、前の記事で書きましたが他のブログで実際に国税庁に聞いてみた方がいました。

bitcoin-valley.com

 この行動力は素晴らしいですね!見習いたいです。

 しかし、この記事のQ&Aでは質問に対する回答のみで、その根拠が一切ないために「税法がおかしい」という不満が少なからず発生しているように思えます。

数式で理解するNEM盗難への補償

 特にこの記事で一番問題があるな、と感じる部分がここです。

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 当時の購入金額をX、

 盗難されたNEMの時価をY、

 Coincheckの補償金額をZとした数式で表すとこうなります。

 ”ー(YーX)+Z=所得金額”

 ー(Y-X)が損失の金額で、+Zが補償されたことによる利益です。

 何が何やら、と思うかもしれませんが、この点は非常に重要で、この数式は「もしCoincheckが補償しなかった場合には、2018年中のNEMの損失は経費になる可能性がある」ということを表しています(Zに0を代入してください)。

 上の記事だと「"補償金額"から"当時の購入金額"を差し引く」という非常に浅い表面的な解釈をしているので、「ああ、盗まれた分はどうにもならないんだ」という理解をしてしまう人が出てくる可能性があるのです。

 X-Yは小学校では「XからYを引く」という意味かもしれませんが、中学校以降の数学では「+Xと(-Y)を足す」という意味に変わります。このことは今回の件に限らず、仮想通貨の損益計算をする上で非常に重要だと思います!

要するに

NEMが盗難されたことによる損失

Coincheckからの補償金

 この二つは単純に足し引きするわけではなくて、仮想通貨による雑所得という集合を構成する一要素(プラスとマイナス)として理解することが必要ということです。

 

 損益計算について完璧に理解しろ、というわけではないですが、大事なことを勘違いしたまま過ごすのはそれ相応のリスクがありますので、公式見解が出た時にはしっかりと目を通して理解しておくことが重要です。

 

 根拠については、仮説ではありますが前の記事に全部書きましたので是非読んでいただければと思います!

selfgox.hatenablog.com

 

仮想通貨の代替可能性(Fungibility)とNEM

代替可能性(Fungibility)とは?

 ビットコインを始めとする匿名でない仮想通貨は代替可能性(Fungibility)が低いと言われています。

 Fungibilityについての説明は以下の記事を読むとわかりやすいでしょう。

coinandpeace.hatenablog.com

individua1.net

 僕はこれらの記事を読んで改めて匿名通貨の本質というものを考えようと思いましたが、いかがでしょうか?

 今回のCoincheckの件については、不正送金先のウォレットアドレスをNEMのモザイク(機能?)によってマーキングすることでNEMを追跡できるようにしました。

 ブロックチェーン上には全てのトランザクション履歴が残るので、一度マーキングされたウォレットを経由すると、その経由したNEMは不正送金されたものであるという記録を保持し続けることになります。

Fungibilityと通貨の同一性の証明

 また、最初の記事の引用になりますが、これも同じ程度に気になっています。

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 当初僕はNEMを含む仮想通貨はFungibilityがあるからNEMによる補償であっても課税の対象となる、と考えていたのですが、どうやらFungibilityについて誤解していたようです。

 理屈としては「NEMが返ってきたとしても自分が持っていたNEMと証明できないから課税される」という方がどうやら正しかったようです。

 通貨というのはそもそもFungibilityがあって、仮に「知人に1万円を貸して後日返してもらったとしてもその"一万円札"は自分が知人に貸した"一万円札"と①同一のものである可能性が低く、なおかつ②同一のものであるという証明はできない」わけです。

 これをNEMでいうならば、「不正送金されたNEMが返ってきても」NEM-1やNEM-2というレッテルが付いているわけではなく、「自分が過去に保有していた"NEM"である証明ができない」ということになるでしょう。

 もしこれがNEMでなく、何か固有のもの、例えばお気に入りのぬいぐるみなどの固有のマテリアルであれば、戻ってきた時に自分が過去に保有していたものと同一のものであるという証明はできるかもしれませんが、あくまでもNEMは通貨なので証明しようがないということですね。

 だから「NEMが返ってきたところで課税の対象となる」という考えを僕は持っています。

 

Weekly Ochiai

 毎週水曜日の夜10時ごろからNewsPicksで落合陽一が仮想通貨と様々なテーマについて話す「Weekly Ochiai」という番組があるのですが、非常に面白いので是非見てほしいです。

 仮想通貨を100%投機の対象としてとらえているのであれば見る必要はないのですが、少しでも技術的な観点に興味を持っているのであれば楽しめると思います。

www.houdoukyoku.jp

 

終わりに

 前回と今回でCoincheckNEM盗難被害と税金のことについて、自分なりに詳細な仮説を立ててみたつもりです。

 答え合わせについては、公式発表を待ちたいと思います。

 次回のテーマはまだ考えていませんが、匿名通貨のことについて調べて書こうと思いますのでよろしくお願いします!m(_ _)m