仮想通貨の損失は繰り越せるのか?
前回の記事では、仮想通貨の損失について、仮想通貨同士で通算できるのか?ということを書きました。
今回は再び所得税的な視点で、仮想通貨の損失は繰り越せるのか?というテーマで書いていこうと思います。
あくまでも法律を読み解いたらこうなるのではないか?というものなので参考程度でお願いします。
仮想通貨以外で繰り越せる損失の例
株式の譲渡損失
No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い|所得税|国税庁
株式の譲渡による損失はその年の翌年以後、3年間に渡って繰り越すことができます。
例えば、平成29年に損失を出した場合は、平成30・31・32年の株式譲渡の利益から差し引くことが可能となります。
ただ、損失を繰り越す場合にはその損失について確定申告をしておく必要があります。
FXの損失
No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|所得税|国税庁
FXについても、その損失は3年間に渡って繰り越すことができます。
事業等による損失
事業所得や不動産所得には青色申告という制度があります。青色申告という方式で申告をすると、収入や経費を帳簿へと正確に記帳することへのインセンティブとして、様々な税法上の優遇措置を受けることができます。
そのうちの一つに純損失の繰越しと繰戻しがあります。
事業所得等の損失については、他の所得(給与とか雑所得とか)と通算することのできる「損益通算」という制度があるということを前の記事で触れました。
それでも赤字が大きすぎて損失の額が残ってしまった場合については、翌年以後3年間に渡って損失を繰り越すことができます。また、損失が発生した年の前年の所得の額から差し引くことのできる「繰戻し」という制度もあります。
仮想通貨の損失は?
株やFXなどは損失を繰り越すことができます。
しかし、仮想通貨についてはその損失を繰り越すことが今のところできません。法改正の検討が追いついてないですし、そもそも議論に上がっているのかさえわかりません。
ビットコインを例に挙げると、2017年末は220万円程度でしたが、年明けは一気に暴落して一時期64万円近くにまでなりました。当然、今の段階で損失を抱えている人もいると思います。2018年末までにどうなるかはわかりませんが、もしかするとそのまま損失を抱え続ける人もいるかもしれません。
なぜ損失繰越の制度があるのか
所得税というのは暦年(1月1日から12月31日)の所得をベースにして税金の額を確定する仕組みになっています。基本的には一年で課税関係というのは終了するのですが、時にはそれが著しく不公平になることもあります。
例えば、2017年はたくさん損失を出したけど、2018年は利益が少なからず出た場合に、2017年の赤字は無視して2018年の利益からは税金を取るよ、というのは何となくフェアでない感じがしますよね。
このような場合に「一年で課税関係を終了させる」を厳密に適用すると担税力(税金を負担する能力・資力)の観点からすると決して好ましいことではありませんし、何より経済の健全な発展が促せなくなってしまう可能性があります。
そういったことを考慮しているため、経済活動は自己責任ではありますが、国としては税制的に緩和措置を取っているというわけです。あくまでも措置なので、原則的なものではなくて、多くの場合、特例として設定されていることが多いです。
今後の制度創設の見込み
日本では仮想通貨をいち早く"通貨"と定義したり、麻生さんがブロックチェーン技術を革新的であると発言するなど、比較的前向きに取り扱っていこうという姿勢が覗えます。
来年再来年にすぐ損失繰越の制度が創設されるということはないでしょうが、そう遠くない未来に仮想通貨トレードで発生した損失については繰越せるようになるとは思います。
僕個人の意見としては、(トークンエコノミーの)本質はそこではないと思いますが、何にせよ前向きに検討する姿勢が見えているのは仮想通貨界隈・市場にとっては良いことです。
しかし、損失が繰り越せるようになったからといって「投資は自己責任」でなくなるわけではありませんので、勉強してなるべく損失は出さないようにする努力をする必要があります。