落合陽一×筑波大学の仮想通貨クラウドファンディングの何がすごいのかを考察してみた
筑波大学の准教授である落合陽一さんが筑波大学と連携し、ビットコインも使用できるクラウドファンディングを開始しました。
readyfor.jp
さて来たぞ,国立大クラファン第二弾,仮想通貨へ
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2018年2月21日
弊ラボ弊大学としては2年前に[国立大]初のクラファン(税制寄付控除付き)を始めて,多くの支援者様に恵まれ🙇
プロジェクト継続中(そろそろまとめ冊...#NewsPicks https://t.co/foSC3NDoQQ
このCFは筑波大学の研究費用に充てられるとのことで、落合さんが前々から提唱している「デジタルネイチャー」の世界を実現するためのプロジェクトの一部です。日本円とビットコインを使用して寄付をすることができます。
ビットコインでの寄付ができる、ということが目新しいため、一見すると「珍しいな」という程度の感想しか抱かない人がいるかもしれません。
そこで今回はこのクラウドファンディングの何がすごいか、ということを所得税的な観点も含め、解説していきたいと思います。
何がすごいのか?
①国立大学が主体となったものであること
CFといえば、通常個人や民間企業が自分のプロジェクトを実現するために寄付を募り、寄付額に応じて何か見返りを提供するというものです。
正直寄付を募るだけであればすぐできます。構想を立ててCFサイト(CAMPFIREなど)に登録して募集するだけです。
しかし、これが国の機関であると話が違います。
少しでも関わったことがある人ならわかると思いますが、国の機関とはものすごく慎重で意思決定がとにかく遅いです。そもそもCFを行ってよいのか、募った寄付金の使い道はどうするのか、見返りはどのような形で提供するのか等々様々なものの詳細を練った上で、上部の決裁を取った上で実施しなければならないものと思料します。
そのため、ハードルがすごく高いのですが、それを国立大学である筑波大学が行ったということがまず一つすごい点として挙げられます。
まあ、筑波大学は以前にも何度かCFを行っているので、その点については今回はあらかじめクリアしているとは思いますが、基本として紹介しておきます。
②落合陽一氏自体には一切お金が入らない
当CFの主体はあくまでも筑波大学なので、直接落合さんに寄付金が入り、落合さん自身が自由に資金を使えるものではありません。
デジタルネイチャープロジェクトの一環とは言えども、その目的はあくまでも学生の研究に資するためです。
これは落合さんの准教授としてのバックグラウンドを知らないとわからないと思いますので、是非調べてみてください! ただの准教授ではありません笑
③仮想通貨のユースケースを拡大するものであること(寄付金控除)
この事実が一番大きいです。
国税庁が発表した仮想通貨の取り扱いによると、仮想通貨はそれを使用する時に利確扱いとなり、利益が出ている場合にはその所得は課税の対象となります。
そのため、トレードのみならず、仮想通貨を利用することへのディスインセンティブとなっていたのですが、このCFを通じた筑波大学(国立大学法人)への寄付は所得税法上の寄付金控除の対象となるという点がインセンティブになりえます。
寄付金控除とは?
寄付金控除とは、所得控除の一種で、特定の団体に寄付した際に「寄付金の額ー2,000円」をその所得から差し引くことができる(所得の最大40%)ものです。
計算例
例)ビットコインを1BTC50万円の時に購入し、1BTC100万円の時に1BTCを寄付した場合
雑所得の金額 (100万円 - 50万円) = 50万円
寄付金控除の額 100万円/BTC ー 2,000円 = 99万8千円
この場合、他に給与所得等があれば雑所得からは差し切れない分について、所得の40%を上限として所得から差し引くことができます。
つまり、どういうこと?
要するに、今まで仮想通貨を使用すると課税されるので使用をためらっていた人も、「税金がそこまでかからないのなら使ってみようかな」という気持ちになるかもしれないということです。
飲食店などで使用するだけでは単純に「使った分」+「税金」となるだけでしたが、この使用が寄付金控除の対象になるという事実はすごく大きいことです。これは確定申告における税額計算のロジックを知らないと少し理解しにくいことかもしれません。
仮想通貨の普及のための第一歩であるということ
仮想通貨は"通貨"と定義されているものの、本質としては"株式"や"モノ"に近いものです。そのため、トレードしたり使用する度に利確となり、円ベースで計算する必要があり、これはとても煩わしいことです。
仮想通貨を始めとして、トークンエコノミーの経済圏を作るには既存の法律の壁が巨大すぎて実現することは非常に難しいことだと思います。
しかし、法律とは慣習や新しいテクノロジーに対応するような形で作られることもあり、既成事実として広めてしまうことが有効であるという考え方もあります。
寄付金控除のようなロジックを使わないとインセンティブを生み出しにくい、というのはそういった課題を抱えていることの裏返しではありますが、まずはユースケースを拡大していくことが非常に重要であると思います。
落合陽一×筑波大学のこのクラウドファンディングは技術普及の一歩としては無視できない、偉大な一歩であるということを添えておきます。
日本再興戦略もおすすめ!
Newspicks監修で発刊された落合さんの日本再興戦略も一読の価値ある素晴らしい書籍でしたので、是非読んでみてください。
僕ももう一読したらレビュー記事を書きますのでよろしくお願いしますm(_ _)m